コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

議論が盛り上がらない=レビューになっていないか、議論の場をつくる3つのテクニック

顧客内の現状分析が終わり、さぁプロジェクトとしての施策を出そうという段階。
どこに課題がありそうかはなんとなくプロジェクト内で同じ視線で見えてきて、次の打ち合わせではとりうる策をみんなで考えることとなっている。

「こちらの施策案も作成して、しっかり打ち合わせの準備はした。」
「あとは当日、みんなの意見を聞きながら、議論してブラッシュアップしよう」
と意気揚々に打ち合わせに臨むも、なんとなく議論が盛り上がらない。
こちらの案に否定的な指摘や「なんか違うんだよねー」と煮え切らない態度。
しっかり準備したはずなのに、「議論の場」としては成立しない。
こんな経験をしたことはないだろうか。

こうなる要因の1つに「議論でなくプレゼンになっている」ことがある。

本来は記載した案は呼び水であって、議論を温めるため。
コンサルが主に顧客と打ち合わせるのは議論を促し、その顧客・プロジェクトに最適な案を仕立て、参加者の腹落ちをつくるためだ。
だがその意図は参加者には汲まれず、「プレゼン」の内容に1つ1つ正しいか答え合わせをする形になってしまう。
打ち合わせ=プレゼンのため、ではない。

ただ、これまでも「オピニオンを持て」と言っていたし、仮説を持たずに臨むのも心もとない。

では、どうするのか?
ファシリテーターのテクニックとして3つある。

まず1つ、大前提として、「こちらが考えた案はあえて打ち合わせ資料に書かない」だ。
案が資料にきれいにまとまっているとついついレビューの形になり、参加者が思っていることや新たな発想はでてこない。
資料には書かずに、議論したいことだけ書いておくのだ。
「じゃあこちらの案は使わないの?いらないの?」と疑問に思うだろう。
これはあくまで引き出しとして使う。
例えば、その場で誰も発言しないなら「我々も考えてきた1案としてこういうのがあるんですけど~どうっすかね?」と呼び水に使う。
ある程度発言が見込める・発散の場であるなら、2~3割くらいは資料に書いておき、「あえて空き」を残して発言しやすいようにする。
出してないこちらの案をさもその場で考えたように「こういうのってありえますかね?」と皆の意見を乞う形で出してみる。
どなたかが発言されたら、「私はこう考えたんですけど、ちょっと違う意見みたいですね。その差はなんなんでしょう?」と差異をあえてつくり、意図や背景を引き出す。
こうすることで、参加者は頭が回りだし、自分の案や意見、それを考えた理由が明らかになっていく。

もう1つは、「案を考える中で感じたもやもやを相談の形で出す」というもの。
例えば、いくつも施策案を考えていた際に、こんなもやもやがでてくるかもしれない。
「組織1つなくす施策ってちょっと過剰かな」
アウトソーシングも効率化の1案だけど、顧客の会社の方針に沿ってないかな?」
「経営層としてはこの施策はアリだけど、事業部としては面倒だしメリットないよな」
この挙がったもやもやを率直に顧客にぶつけ、意見や考えを聞くのだ。
そうすることで顧客の意見や意志が見えてくる。
「そういってもゴール達成にはココまで踏み込んでいく必要がある」
「今回、会社全体の改革を考えるなら、経営層にも不利益合っても、現場の人の観点を重要視すべきじゃないか」
コンサルが必死に顧客のためにと考えていれば、案を考える中で出たもやもやは当然顧客にもいつか突きつけられる命題だ。
案をレビューするのでなく、「これはアリかナシか」「本当にこれは会社のためになっているのか」を考えることは有益な議論になる。

そしてもう1つは「考えた案から分類なり、選択肢をつくり、提示する」形。
「内向けの施策を考えてたけど、サプライヤー・パートナー向けの施策で効率化する策もあるんじゃないか」
「顧客が取引している製造・物流・小売という相手によって、SCM連携するための必要な要素が変わるかも」
と発想できたなら、1つ目のテクニックと合わせて、この枠を提示する。
「今日、施策を考えていきましょう。ただ、軸として社内、サプライヤー・パートナー、両面で施策を考えてみましょう」
「施策を洗い出す際に、取引先である製造・物流・小売によってとりうる策に違いがないかも考えてみましょう」
その軸ってどういうこと?、を理解しやすいようにいくつかこちらで考えた案を説明に使う。
こう出すことで、1から議論の中で軸を考える必要はなくなり、顧客・参加者ははじめから多少な視点で発想しやすくなる。


こんな回りくどいやり方やらなくて、バシッと案をぶつければいいじゃないか、と思う人もいるだろう。
「コンサルは顧客に解決策を言ってナンボ」
「顧客に相談する形なんてもっての他」
と考える人もいると思う。

だが、このやり方で出した案は「コンサルが考えた案で顧客自身が考えた案」ではない。
レビュー形式になり、体裁上は整うが、いざ顧客自身が説明する段になると「どこからか降った案」なので自分の言葉で語れない。
そうなると上位層からの指摘にひるんだり、「体裁はつくった」のみで満足し実行・アクションに移されない絵餅になってしまう。

これでは何の意味もない。
顧客自身が腹落ちし、自分たちの言葉で語れるようになってこそ、魂がこもり、実行が伴うのだ。
プロジェクトの計画や施策は実効性が命だ。
そのために、議論を盛り上げつつ、顧客が「自分のもの」になるようなテクニックが非常に重要になる。

「今日の打ち合わせ、議論でなく、レビューに終わっちゃったな」と思う人は、ぜひここに挙げたテクニックを使ってみてほしい。