コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

コンセプトとは何か、あるいはシステム構築プロジェクトでの必要性

業務改革やシステム構築のプロジェクトで、我々はゴールとは別に「コンセプト」というものを策定する。
そもそも「コンセプト」とは何か。
プロジェクト以外でもたまに聞く言葉だが、横文字で、わかったようなわからないような感をもったことはないだろうか。

辞書的には「概念」や「全体を貫く基本的な考え方」とある。
「チームのことだけ考えた」という本では「誰にどんなセリフを言わせるか」とある。

最もわかりやすくコンセプトを表現しているのはデザイン思考だ。
デザイン思考ではコンセプト=「やることとやらないことをわかるようにする」。
同時によくあるNGケースも示しており、それは「社会やユーザーが入っていない」ものだ。

自分のコンセプトの定義は「何をまずやるのか」「何は後回しか」がひと目で分かり、何のためにやっているのか立ち帰れる1枚もの、だ。

 

以前はやっていた働き方改革を例にとろう。
どんなものがコンセプトとして思いつくだろうか。
例えば「自社の強みを活かして業界No1の働き方を実現する」。
これはNo1などビビッドな言葉があり、一見コンセプトっぽいかな、とも見える。
だが、これだと「誰がどんないいことがあるのか」「何を優先するのか」が明確ではない。

「個人の強みを評価し、強みを活かして価値をだしやりがいを感じる働き方を実現する」だとどうだろうか。
これだと
「強みを評価する仕組みがまず仕掛けで必要」
「弱みを克服する策は後回し」
「価値を出すこと=やりがいとして、それを最大化する」
など何をするか、この改革でどんないいことがあるのか、が読み取れる。
少なくとも先述のコンセプトよりずっといい。

 

このコンセプトがある場合とない場合、どんな違いがあるか。
1つはプロジェクトで取り組む施策やシステムに盛り込むシステム機能要求を「どっちを優先するか」、意思決定する際の判断基準になる。
どんな会社・プロジェクトでもリソースは有限だ。人もお金も限りがある。
だが、取り組むべき施策や実現してほしいシステム機能要求は無数に挙がってくる。
そのときに「強みを活かすのに直結する施策はどれだろう?」「弱みを克服する策っぽいから後回し」とコンセプトをもとに判断できる。
プロジェクトで判断に迷う場面でも「強みを活かすにフォーカスしているか?」「価値だせる策になっているか?」と立ち帰れる。

もう1つは現場の理解だ。
改革は変化を伴い、ときには一部に痛みを伴う。
人は変化を嫌うものだ。
そのときに自分なり所属する会社に何のメリットがあるのかわからないことに賛同し、積極的に関わろうとしないだろう。
むしろ自分のメリットが減ったり、やることが増えるなら反対に回る。
そのときに、トップダウンで無理やり押し通す方法もあるが、それだと表面上は賛同・実行してもゆくゆくは元の状態にもどってしまう。
このときに「この改革でどんないいことがあるのか」があると現場へのメッセージも変わってくる。
「今までやりたくない弱みばっかり指摘されてたけど、それが変わるのはいいな」
「顧客に価値あることが評価されなかったのが、評価され支援されるのはいい」
と理解を得られると求心力をもって推進できるようになる。

 

システム構築でもコンセプトは重要だ。
意思決定に必要なだけでなく、関係者を巻き込むのにも必要になる。

あるプロジェクトでは、はじめ「パッケージを使い倒す」がコンセプトだった。
だが、それだと「とりあえずやれることはやればいいのか?」「何を先にやるのか?」など疑問がわいてくる。
同じ用に「パッケージに業務を合わせる」というコンセプトもイマイチだ。
業務とパッケージのGapがあるときに、どちらを優先すればいいかはわかる。
だが「それで何が嬉しいのか」が踏み込めていないため、現場からは「そうはいっても認められない」と反発を受けてしまう。
我々がプロジェクトの参画した際には以下のように見直した。
「パッケージ機能に合わせ運用を変更し、低コスト・柔軟な高品質なシステムを目指す」
それまでは法制度対応などあってもアドオンが多くてすぐに対応できなかったものをパッケージに合わせることで即時対応を実現する。
かつ、総コストはアドオンアドオンで高くなっていたものを抑制し、会社利益に貢献する。

 

プロジェクトの意思決定や関係者の理解を促すためにはコンセプトはこのレベルまで必要だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
このたび本を書きました。7/22販売です。
プロジェクトの実例盛り込み、「どう求めるシステムをつくっていくのか」を書いています。
「システムを作る本」はありますが、発注者・依頼側として「どうつくってもらうか」を書いた本は少ないので、ぜひ手にとって読んでみてください。
https://www.amazon.co.jp/dp/4532323991/ref=cm_sw_r_tw_dp_PKT17MM6ASX15Y2SP8EM