コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

構想策定は網羅性より的確性、そして折木奉太郎のモットー

構想策定と呼ばれたり、将来構想・事業構想と呼ばれたり、未来のあるべき姿と呼ばれたり、呼ばれ方はさまざまだが、業務の前提となる上流の議論では、どこまで議論するかは難しい。
業務を担ってきた人と議論をすると、つい「あれはどうする」「これはどうしよう」という網羅性に議論がよりがちだ。
自分の仕事に近いし、実感が湧くし、そうなるのも無理はない。
ただ、「構想」と言われる抽象的だが全体を貫く方針ごとを議論する際に、網羅性を追求するといつまでたっても議論は終わらない。
日々の業務はいろいろなパターンや特性、条件があるから当然だ。
ファシリテーションを表するコンサルタントでも、つい油断をすると細かい話に議論が流れてしまう。

そんな構想策定を議論する際のコツは「網羅性よりも的確性」「解決策の多さよりも課題に直結するか」だ。

構想策定ではなんらかのプロジェクトゴールなり、解決したい大きな問題が存在し、それを解消できた構想を描く。
むしろもともと想定していた問題を解消できないならその構想には価値はない。
網羅性を気にしだすと細かな解決策の話に終止し、当初の問題に直結しない話が多くなる。
「こういう場合はこうしないと」
「こんなときはどうしよう」
などの回避策や対応策になってしまうからだ。

この議論をリードするには
「もともとの問題を解決する議論になっているのだろうか」
ということをファシリテーターは常に意識しなければならない。
そして問題に直結しない議論であればぶったぎり打ち切らなければならない。
真に議論すべき話に注力するには、問題に直結しない議論をしている時間はない。

コンサル・ファシリテーターは通常議論の中では「こんな案もあるのでは?」「こういう考え方もないか?」という発想や策を広げる動きをとることが多い。
しかし、構想策定では発想を広げることも大事だが
「ちゃんと問題を解決する策になっているか」
という検証ができているという前提でなければ意味がない。
議論をその場の流れに任せていると細かな対策の議論に流れてしまう。
細かな対策議論で策を広げる動きを繰り広げても、もともとの問題につながらないのだから価値は低いのだ。
「ちゃんと問題を解決する策になっているか」、この手綱を引き続けることの方がずっと難しく、議論の参加者にはなかなかできない。
だからこの手綱を引き続けるだけでも価値はあるのだ。

もう1つ、構想策定をする際の心構えも紹介しておこう。
「やらなくていいことならやらない、やるべきことは手短に」
構想策定では議論したいことは無数にでてくる。
だが時間は有限だ。
その中で何を議論するか、本当に議論すべきことはなにかを見極め、そこに時間をかける。
構想策定でゴールや問題に直結しない、「今議論しなくてもいいこと」は後回しにすればよい。
この心持ちで議論にのぞみ、「やるべきこと」の見極めとしてゴールや当初の問題を使う。

先の心構えの言葉は小説「氷菓」の折木奉太郎のモットーであり、私のモットーでもある。
時間はいつでも有限だ。本当にやるべきことに注力しないと時間はいつまでたっても不足する。