コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

「丸投げ」と「一任」の違い、その差を生むリーダーが暇になること.txt

これまでプロジェクトをリードする役を担う中で、メンバーから「丸投げされた」というフィードバックをもらったことがある。
他のリーダー、マネージャーでも、メンバーが「丸投げ感」を感じてモチベーションが下がるケースを経験した人もいるだろう。
自分がメンバーでやってきた際に「丸投げ感」を感じたことがない人は余計にそれを感じにくい。
だがこれを放置するとチームでのデリバリーがうまくいかなかったり、チームの関係が崩れることもある。
自身の経験から、メンバーへ丸投げと一任と感じさせる違いを整理しておこう。

 

□丸投げされたと感じる場合
a)プロジェクト概要やタスクの目的、全体タスクがあいまい
今後のタスクにどれだけの検討項目があるのか曖昧なままタスクを依頼した場合。
例えば改革方針の検討を依頼しておいて、論点が何があるのか、何が検討要素に入らないといけないか、メンバーがわからないまま依頼している。
タスク全体のうち何を優先しまず検討するのか、なぜその優先順位でいいのか、わからないままだと丸投げ感があると感じる。

b)役割が定義されていない
例えば稼働計画を任されたときに、テスト計画とコンティンジェンシープラン計画、判定基準でタスクが分かれるが、担当がそれぞれ分かれているのか、それぞれがどこまでやるのか、そこに何まで含むのかが曖昧である場合。
「そっちで検討するんでしょ?」「あ、こっちでも検討してた」となってしまい、二度手間や調整ごとから入る必要がある。
プロジェクトとしてそこが曖昧なので、それを明らかにすることから入る場合もある。
だが、たいていはPMが決めればいい話を、 役割を明確に定義せず「柔軟に対応して」「プロジェクトってそういうもんだから」といって済ますこともある。
そうなると丸投げになる。

c)「こうしたらいいのでは?」という提案に対して聞き入れてもらえない、そもそも相談・共有の時間がない
自分の経験で、テスト全般を担当しているとき、PMにほとんど相談できないことがつらかった。
進め方やまとめ方、顧客への相談方法も相談したかったが、そもそも進捗すら放置、あるのは週1回15分くらい喋ることくらいだった。
任された、といえば聞こえはいいが、やったこともない領域で不安がいっぱいなのに相談すらできないのは、「任す」を超えている。
単純にaやbもこれが根本の原因なことがある。
逆に、事細かに「こうやって」「これをこうして、あーして」となるとメンバーの考える余地がなく、
 「よくわからないのでPMの言うようにやる」
となり丸投げ感から一転、作業者感に変わり、これもモチベーション低下とチームデリバリーの崩壊・PM頼みにもつながる。
このバランスをうまくとり、相談の時間をつくることができないと、どっちにころんでも良くない結果に至る。

d)援護なく孤軍奮闘
時間をとったとしても、話を聞いても何もしてくれない(できる余裕がない)、となるとこれも丸投げ感になる。
エスカレーションしてもとりあってもらえず、「オーバーワークの中で自分が頑張るしかない」ことも丸投げ感になりストレスばかり溜まる状況に陥る。

 

□一任されたと感じる場合
これまで述べてきたものと逆が、一任されたと感じるかどうかの違いになる。

a)全体タスクの中で自分の仕事が明確・腹落ちしている
b)役割が明確になっている
経験者やスキルレベルの高い人なら、ツーカーで役割や全体像を把握したり、提案書やその他資料から必要な要素を自分で考えられる。
だが未経験者・スキルがまだ追いついていない人にそれを肌感でわかれ・考えろというのも酷だし、ピンとくるはずがない。
本人がわからないなら細かいレベルで必要な検討項目、つながり、優先順位を合わせておかないと1人で仕事を回すことができない。
例えば「会計まわり全般担当ね」と言われても、メンバークラスでそこから必要なタスクを描ききれる人は少ない。
「成果物は今年の予算と、管理会計項目に落とすことだから」
「役割としてはお客さん担当者を支援して、尻を叩くこと」
「これにより全社の次年度計画を立てて、経営計画につながっていくから」
と全体とのつながりまで理解でき、タスクを依頼されると「任された」感はある。

c)相談の時間と提案受入
d)いざとなったらPMがリカバリ
PMと検討結果をどうまとめようか、進め方はああしようという相互検討の場があるかないかも必要だ。
それだけの時間的余裕と、aにあるような今後のタスクイメージがあるかどうかで、相互検討の場がもてるかどうかが決まる。
相互検討の場で、メンバーが自身の提案が受入れられれば「チームに貢献しているという感覚」「うまく進んでいる感・前に進んでいる感」とうのが任された感覚として生まれる。
スキル・経験から見て難易度の高い仕事でも、委任レベルを下げ、PM・TLがレビューの時間を多く取ることでも、悪戦苦闘しつつも「任せてもらえた」と感じる。
最悪、うまくいかなかったらPMがリカバリに入れる状況なら、心理的安全性が確保され、メンバーは安心して仕事を進められる。

 

総じて、「事前の段取り合わせ」と「見てもらえている」「いざとなったらなんとかしてもらえる」感があるかどうかがキーとなる。
どちらも時間的余裕が必要だが、それだけの余裕がなければすでにプロジェクトとしてはYellowと判断したほうがいい。
リソース追加手配やScopeの絞り込みなど、手を打つ必要がある状況と見るべきだ。

ヘルシーさ、やる気の量としては当然「任された」と感じてもらった方がいいデリバリーにつながる。
そのためにもやはりリーダークラスは多少暇なくらい余裕を設けて置く必要がある。