【本】プロセスエコノミー
マーケティング4.0で言われるような経験価値を志向しようというもの。クオリティでの差別化は強者が1つなので、別軸でしょうぶすべし、自分の経験から他人の共感を得て、個の熱狂を集団の熱狂にすべし、ととく。その中でいきなり100%はてきないため、途中で方針を変更することを前提とした修正主義が良い進め方。スパーリングのように進めようとも。方々で聞いた話をうまくまとめた感じの本。
「文字打ちを皆が見る場」を避ける2つのコツと7つのチェック項目
ファシリテーターの役割は議論を活発化し、意思決定などをスムーズにし、打ち合わせなどを効果的な場に導くことにある。
ただ、打ち合わせ中にこんな状況になることはないだろうか。
議論してある程度の結論を導いたあと。画面に映し出された資料に、パチパチをその結果を打ち込むのを参加者がじっと見ている。ファシリテーターや進行役は文字打ちに集中、なんともいえない沈黙がその場を占める。
この状況はファシリテーターとしてはできる限り避けなければならない。
なぜなら、場の効率性を損なうからだ。この沈黙の時間も複数の参加者の時間を奪っているのであり、時間の無駄になる。また、こういう時間が多発すると自然と内職に移る参加者がでてくる。
それよりも決定事項や未決事項を明らかにする、次の議論に移る、という動きをした方が効果的な場に導くことができる。
ファシリテーターは参加者の時間効率を最大化するのが仕事なので、その場で資料をきれいにするのに参加者の時間を使うのはもったいない。議論を生産的にすることに頭をフル回転させる。議論すべきことがないなら、さっさと次の議論に移るかその場を終わらせる方がよい。
とはいっても頭でわかっていてもついつい、この「文字打ちを皆が見る場」に陥ってしまう。
これを回避するのに2つのコツがある。
1つはファシリテーターと画面表示役・文字打ち役を分けることだ。
ファシリテーターは本来進行なり議論の活発化に集中しなければならない。だが、そういうスキルのない人ほど、言われたことを文字打ちすることに陥りがち。「この場をどうさばいたらいいかわからない…なら資料更新しておこうか」と思って資料にパチパチする方に手が動いてしまう。
これを避けるためにそもそもファシリテーターと資料役の役割を分ける。ファシリテーターは議論活発化に集中し、別の人が資料の投影や文字のパチパチを行う。この2つの役割を同時にこなす器用な人・スキルが高い人もいるが、本来議論をうながすことと経緯や決定事項を文字に落とすのは使う脳みそが違う。両方を器用にできないなら役割をわければいい。
われわれの会社では、ファシリテーターとスクライバー・ノートテイカー(議論を文字に落とす人)は役割をわけて打ち合わせに臨む。これも上記の背景があるからだ。
最近はクラウドなどITツールが発達いているため、別々の人が同時編集ができるので、ファシリテーターが画面を写しながら、別の人が書き込みする、ということもできる。ただ、この場合も鋼の意志がないとファシリテーターがPCに手を伸ばし文字を打つことに逃げてしまうので、そもそもファシリテーターがPCを触れないように事前に役割を分けておくほうがおすすめだ。
この1つ目のコツは「ファシリテーターを文字打ちさせない」という環境づくりだったが、それだけだとファシリテーターは固まって何も発言できない、という状況に陥りがち。それを回避するために「問をチェックリスト化する」というのがもう1つのコツだ。
その場で臨機応変に問を出すのは高いスキルを求められる。なので事前にチェックリストとして定型化しておく。主なチェック項目としてはこの7つだ。
①でてきた意見はどんな内容か、正しく自分・参加者が理解できているか
→理解できていないなら改めて説明いただくか、ファシリテーターが翻訳して参加者の理解をうながす
②参加者の質問と回答は正しくつながっているか、質問の回答になっているか
→回答になっていないのであれば質問を再度説明するか、「回答になっていないのでは」という問いを場に投げる
③複数人から出てきた意見は対立していないか、対立してるならどこで対立しているか
→対立していれば対立していることを明らかにし「どちらの意見がよいか」を場に問う、対立しているか自身がなければ「意見が対立してます?」と場に問う
④特定個人の意見が意思決定になっていないか、場の合意になっているか
→特定個人のみに発言が集中していれば「XXさんはどうですか」と振る、別の意見がすでに出ていれば「こういった意見でてましたが今の発言が意思決定でいいですか」と場に問う
⑤結論はクリアになっているか
→クリアになっていれば「こういうことでいいですか」と確認する、クリアでないなら「結局結論はどういうことでしょう」と場に問う
⑥結論から次のアクションは明確か
→自身でわかるなら「ではこれを受けてこうしましょう」を確認する、わからなければ「ではこの結論からこのあとどうしましょう」を場に問う
⑦この場の論点に回答しきれているか、今日の目的を達成できたか
→回答しきれていれば次のアジェンダに・目的達成できていれば終了、自身で判断つかなければ「すべて議論し尽くしてますか、懸念やもやもやないですか」を場に問う
ファシリテーターはかっこいい意見を言ったり、みんながハッとする結論を自分が導き出すのが役割ではない。もちろんそれができるにこしたことはないが、まずは「自分が」ではなく、どう場を活性化することに集中する。そのために、場の状況や議論の内容を見て、①~⑦に該当しているものはないかをチェックする。そして必要に応じて、場に問を投げる。まずこれを徹底することがファシリテーターの価値になる。
ファシリテーターはやもするとただの進行役になったり、文字打ちのタイプライターになってしまう。それを回避するためにも挙げた2つのコツをもとに愚直に議論の活発化に貢献しよう。
過去のコミュニケの失敗とRespect
若かりし、私がチームリーダーをやっと担えるようになったとき。他人のことがわかってないが故に起きた、苦い経験をお話しよう。
ある人事部と一緒のプロジェクトを行っていたとき、新卒、ピッカピカのメンバーがチームメンバーとして入ってきた。
「新卒」ということもあり、アサイン時点でパソコンや顧客とのやりとりなど、ある程度のレクチャーとフォローをし、仕事が進められるだけのインプットは教えておいた。
それ以降は、毎日のチェックポイントとして進捗確認と相談の時間は設けて、あとは本人に任せることとした。
「自分で咀嚼して理解して考える時間が必要だろう」
「コンサルタントとして入ったんだし、自分で考えてみたいだろう」
「定期的に相談の場は設けているし、追加で質問したいときは自分で見計うだろう」
と思っていた。
だが、あとに本人に聞いた話だと
「なぜこんなにかまってくれないのだろう」
「自分とコミュニケーションとるのを避けているのかな」
「自分の頭だけで考えるの辛いな…」
と思い悩み、なかなかに話しづらい・やりにくい雰囲気に感じていたようだ。
そのためなかなか仕事はうまく進まず、そしてチームリーダーの私からは進捗を細かくチェックされるようになり、さらに相談はしづらくなり、と悪循環に至ってしまった。
これが解消したのは、たまたまお客さん内で行われたワークショップに我々も参加したのがきっかけだった。
そのワークショップは、「相手の人となりを理解し合う」というもので、2人1組でお互いの考えや思考の違いを認識するものだった。
そこで、私と新卒メンバーが組むことで、
「え、そんな風に思ってたの?自由に考え動きたいと思って進捗だけ見るようにしてたのに」
「え、そんな考えだったの?単純に避けられてるか、仕事できないやつと見放されているかと思っていた。」
とお互いの思っていることがつまびらかになった。
こんな事態が起きたのは「こういう考えを持った人もいる」という個々の違いの理解・認識をお互いが不足していたことによる。
相互に「こういう考えを持った人もいる」と理解して、相手の思考に合わせた行動をとれていれば事態は違っただろう。
こんなケースは他にもある。
・気持ち・思いが先行する人
・じっくり考え、先の計画を見据えて動き出す人
こういうタイプがタッグを組んで、お互いの個々の認識ができていないと、うまくいかない。
前者の人は「なぜすぐ行動に動かさないのか、走りながら考えていけばいいじゃないか。行動が遅い」と思う。
後者の人は「あとさきなく進めて効率も悪いし、リスクしかない。気持ちだけで仕事はうまくいかない」と思う。
お互いがお互いに不満を持ち、ことはうまく進まないし、ストレスが溜まっていく。
「コミュニケーションを通して考え深めたい人」と「自分でまず考えコミュニケーションで答え合わせやブラッシュアップしたい人」。
「社内の人にはフランクに接するのが壁をなくすと思っている人」と「社内の人にもかっちり応対するのが失礼でないと思っている人」。
いろいろな思考の違いがある。
お互いの思考を認識・理解できていないと、お互いの行動に不満をもってしまう。
これを避けるための行動様式として、弊社ケンブリッジのカルチャーとしてRespect(リスペクト)がある。
直訳すると「尊敬」だが、年長者に対して、偉い人に対して、すごい人に対しての尊敬とは少し違う。
個人の考えや背景を尊重する、という意味合いだ。
個人、その人となりの思考、を理解・尊重すること。
先の私の例だと、自分が「こうだろう」と思うことに固執しないこと。
「コミュニケーションをとりながら思考や行動につなげていきたいと思う人もいる」ということを理解し、尊重すること。
これはコンサルティングワークの中でも役に立つ。
例えば、こんなことないだろうか。
営業業務の集約・効率化の選択肢がいつかあったとしよう。
見積書作成をアウトソースする、受注後の契約管理をアウトソースする、顧客からの問い合わせ含むインサイドセールス業務を集約させる、など。
メリデメを整理した上で顧客と打ち合わせに臨んだが、どうも顧客側の反応が悪い。
「これこれこういう理由で、この選択肢が一番でしょう」と話しても、「うーん、どうだろう」と煮え切らない。
こういう場合に、「全然煮え切らないな!こっちがこれだけベストな選択肢を出しているのに!」「まったく理解できん!」と怒っても事態は何も変わらない。
プロジェクトが前に進まなければ1個人がぷりぷり怒っても仕方がない。
そうでなく、こういうときにRespect(リスペクト)してみる。
邪推を抜きに、「なぜこの人はこんな態度をとるのだろう」と相手の思考に立ってみる。
「PMとして現場の痛みを伴う施策に迷いがあるのかもしれない」
「過去経理畑だったので、費用のことそ気にしているのかもしれない」
いろいろな想定が浮かぶだろう。
そして率直に、「こんなことを気にされてますか?」と相手に聞いてみる。
傾聴、といえばかっこいいいが、とにかく純粋に知らないものとして考えを聞いてみる。
単純に体調悪くて頭が働かなかったからという場合もあれば、「言われてみれば」と新たな視点に気づけることもある。
それを汲み取り、改めて議論に持ち込むことで、プロジェクトとしてよりベターな選択ができ、かつ相手の理解も協力も促される。
Respect(リスペクト)という言葉自体あまり日本人にはなじみがない。
だが欧米ではいろんな人種が集まるため、当然の言葉として使われている。
我々が仕事をする上では、他の国のような人種の多様性とはいかないが、思考の多様性は同じようにある。
会社でも、プロジェクトでも、面する人は同じ思考の人は誰ひとりとしていない。
そのときにこの「個人の思考を尊重する」というRespect(リスペクト)を心がけることでずっとものごとがスムーズに進むはずだ。
わからない文書になるのはなぜか、あるいは型の大切さ
①
プロジェクトのメンバーや部下がレポートを作成してきた際にこんな記述で困ったことはないだろうか。
顧客に対して提案に行って、その結果のレポート。
「顧客から懸念があったため再提案となった」
→どこに懸念があがったのか?価格か?提案内容か?体制か?とムクムク疑問が湧いてくる。
複数社に対して発注の見積り依頼をした結果のレポート。
「今運用を見直しているところなので、その結果がわかってから見積もりを受領する」
→どこの会社についてのことなのか?運用って何のこと?それがなぜ見積もりに関係する?と首を捻ってしまう。
こんなケース以外にも仕事の場で「何のことを言っているの?」「どれについて言っているの?」「どうすると言っているの?」とわからない文章は多い。これが困るのは、第3者に共有するとなると伝わらない・誤解を招いたり、あとから時間が経って見ると何のことがかわらない・思い出せなくなるからだ。
当事者としては、背景や経緯を認識しているのでわかるのだが、他の人が見るとわからない。そのときは理解できるのだが、あとから内容を確認した際に「これなんのことだったっけ?」とわからなくなる。
コンサルティング・変革の現場では、議論した内容は図面や工程表のような形に残ることは少ない。文字に起こし、文書にしていくことが大半だ。
この文書はプロジェクトの方針や決定事項としていろいろな人の目に触れることになる。経営層であったり、プロジェクトの内容を実行する現場の人であったり。そのときに、認識齟齬が生じたり、伝わらないものだと、プロジェクトの内容を理解していただけなかったり、変革の勢いをそいだり、最悪誤解を招き意図せず反対勢力をつくることにもなりかねない。
②
議論した結果を文字として残し、プロジェクトの方針として定義する。認識齟齬なく伝わり、議論の場にいなかった人も理解でき、その内容に沿ってプロジェクトや変革を進めることができる。それも時間が経ってからも同じように。
これがスムーズにできるほど、プロジェクトや変革の勢いは増してく。
③
では、この困った文章になるのはなぜなのか?
それは、SVOC、5W1Hが曖昧なことに起因する。日本語の特質・傾向だろうが、目的語や対象が曖昧でも文書として意味が通ってしま。行間を読む、というのだろうか。普通の生活ならこれでもなんら問題はない。気心の知れた集団や課など小さなチーム単位でも意味が通るので困ることはないだろう。
だが、会社全体を巻き込んだり、数百人が関わるプロジェクト・変革の場だと話は別だ。通常は意識しなくてもよかった、SVOC、5W1Hを強く意識しないと「誰にでも伝わる文章」にならない。
④
意識するだけで文章が変わればいいが、なかなか体に染み付いた習慣を抜け出すのは難しい。そのときは、はじめは型をつくって、型にはめていくのが有効だ。
「文章を書く際にSVOCのフォーマットに沿って書く」
「結論は5W1Hの枠に埋めてから文章に起こす」
などなど、書く前に別フォーマットにまとめてかく、文書書くときのチェックリストを設けておくなど。
それでも型を無視したり、型に合わない内容になったりすることはあるだろう。その場合は、上長なり第3者のレビューを通し、こまめにフィードバックもらっていくほかない。
文書を書いている本人としてはなかなか辛い。今まで問題なかった書きっぷりが否定されることになるし、言葉の使い方へのフィードバックが延々と続くのだから。
だが、これが身についてくるとずっとコミュニケーションもしやくすくなるし、顧客との議論もしやすくなる。議論の中でも「何について言っているのか」「いつの話をしているのか」は参加者の中でも曖昧なことが多いからだ。それを交通整理していくと認識齟齬が少なくなり、本来議論すべきことにフォーカスでき、結論も明確になる。
コンサルタントとしてもスキル向上を図れるのだ。
実は、この文章も型に沿って書いているいる。
①こんなこまったことありませんか?
②こうなったらいいとおもいませんか?
③こうするとうまくいきますよ
④懸念点はこう対処するといいですよ
という流れだ。
私もこの型を知って、常にコレに沿って書くことで随分と文書が書きやすくなった。昔から知っている人からも「ずっとわかりやくくなった」という言葉を受けたほどだ。
型にはまることははじめは慣れずにやりづらい。
型にはまらないことで指摘を受けることは辛い。
だが、型が身につけることで以前の自分よりはずっとスキルアップする。必ず。
辛いことに目をそらさずに、できるようになった姿を思い描き、誰でもわかる文書を書くことに修練を積もう。
議論の準備の5つの型、あるいはコンサル能力問われる場面
顧客との打ち合わせに臨むにあたり、「さて、どこまで討議資料として準備しようか」と迷ったことはないだろうか。
特にコンサルティングの現場だといろいろなケースがある。
・顧客が「答え」や「まとめ」を求めており、「こうじゃないですか」を出すのがよい場面
・参加者の納得性が求められており、いろんな意見を出し合って議論を戦わせたい場面
この2つでも討議資料の準備の仕方が変わる。
前者だとコンサルタントとして「こうでしょ」という叩き台なりをもっていくことが価値があるが、後者でそれをやると総スカンを食らうか、「コンサルタントがおっしゃったもの」と他人事な議論に終わってしまう。
議論の進め方にも通ずるが、議論の準備レベルにも型がある。
これを知っておくだけで、「今回はどんな議論をするか、そのためにどこまで準備しておくか」が判断しやすい。
今日はこの議論の準備レベルの型を紹介しよう。
その型は5つにわかれる。
①ブランクアプローチ
②ヒアリングアプローチ
③フレームアプローチ
④選択肢アプローチ
⑤叩き台アプローチ
1つ1つどんなものか、どんなケースで使うとよいかを説明していこう。
ケースとして、プロジェクト投資の上申をどう仕立てていくのか、顧客関係者と議論する場面を想像してほしい。
①ブランクアプローチ
これは議論したいこと、論点のみを示して、その場で意見を聞きながら、議論していくアプローチだ。
プロジェクト投資の上申だと論点として
・上申先はどこか、それ以外に根回しすべき先はあるか
・上申時に必須な項目な何か、どう作成していくか
・決裁で指摘されることとして何が想定されるか、そのための対処は
などのみを示して参加者と議論していく。
このアプローチの使い所は「顧客がある程度中身を知っており、案をもっている」場合、「コンサルタントが案を持っている」場合などに限られる。
準備の時間は要さないのだが、顧客/コンサルタントのどちらかが知見や案をもっていないと沈黙が続いたり案がまとまらなかったりというケースが多い。結構リスクがあるアプローチだ。
あまり経験がないコンサルタントが使った場合、議論が錯綜するかまとめきれずに自爆するケースが多い。注意が必要だ。
②ヒアリングアプローチ
これはベースとなる資料をもとに議論をしていく。
プロジェクト投資の上申だと、過去の上申資料をベースに①のような議論を進めていく。
①のような論点に対しても
・今回は投資額が大きいから、ここまで根拠を求められる
・過去今回と同じようなプロジェクトだと、この項目についての指摘が相次いだ
など、このケースの方がベースがあるため、議論はしやすい。
このアプローチの使い所は過去に同様のことを行った実績などがある場合に、時間をかけずに準備できる。
また、現状の課題や改善点をヒアリングしてくときもこのアプローチをとる。
ただ、新しいビジネスや施策を議論したり、これまでとまったく異なる内容を取り組む場合にはこのケースは適さない。
その場合には③以降のアプローチを用いる。
③フレームアプローチ
これは、整理の枠組み(フレーム)を出して、それに沿って議論するアプローチだ。
フレームは、一般的なフレームワークだけでなく、他社事例を出すことも含まれる。
プロジェクト投資の上申だと、一般的な上申に向けた企画のフレームは下記がある。
・取り組みの背景、現在の問題点
・目指す姿
・アプローチ、主要論点と主要施策
・想定リスクと対策
・与件・前提
・体制、予算
このフレームに対し、今回の上申で足りない部分はどこかを議論したり、枠の内容を埋めていく。
これに他社で上申した際の内容・事例を記載して、「今回どうしようか」を議論するとさらによい。
その場の議論は、事例の中身をベースに追加・修正することに集中できる。
新しいビジネスを議論する際も、ビジネスモデルキャンバスなどのフレームワーク、他社で実際検討したときの内容を提示することで議論はぐっと進みやすくなる。
ただ、準備自体はコンサルタントの知見や調査にかかっているので、知見がない場合には事前の調査や他のコンサルタントへのヒアリングをまえもって行っておく必要がある。
④選択肢アプローチ
これは③の事例などから、とりうる選択肢をパターン化して議論する。
例えばプロジェクト投資の上申についても3つのパターンがある。
①ROI投資→投資対効果をしっかり出して、効果が上回ることを訴求する
②基盤投資→業務を行う上で必須であり投資対効果はでない、基盤であり必要投資であることを理解してもらうか、定性効果や投資しない場合のリスクを訴求する
③戦略投資→まだやったことがないことへの投資であり、効果は未知数なので、実現した姿や経営戦略への紐づきを訴求する
そもそも、今回の投資はどれにあたるのか、を議論する。
それ以外にも上申した内容を「投資額多額の場合」「効果が未知数の場合」「IT系の投資の場合」にパターン分けし、それにそって事例を提示して議論していく。
このアプローチだと、土俵に挙がった選択肢に対してメリデメを議論し、中身を詰めていくことになる。
そのため参加者としては全体観をもって議論がしやすい。
中身を議論するよりも、方向性や方針など抽象度高い議論をする場合にこのアプローチを取ることが多い。
ただ、これは③よりも準備は難しく、リスクもともなう。
このパターン化がうまくないと、「いやこういうパターンもあるでしょ」「なんか同じこと言ってない?」と議論がパターンの良し悪しにそれてしまう。
コンサルタントの整理能力を問われるアプローチだ。
⑤叩き台アプローチ
これはコンサルタントが具体案や完成形の資料を持ち込み、意見、レビューをいただき最終化してく。
プロジェクト投資の上申のケースで言えば、コンサルタントが「今回の上申資料つくってきました、中身見てフィードバックください」という臨み方だ。
このアプローチは最も参加者の負荷は少ない。形あるものに対してレビュー、意見することは1から案を考え議論するより容
だからだ。
ただし、冒頭述べたように、下手をすると「コンサルタントの案の押し売り」になるリスクがある。
参加者との議論や意見収集が十分でないと納得感がでないし、理解も追いつかない。
使い所としては、参加者から全く案がでない場合、もしくはこれまで十分議論・意見収集しており議論をまとめるのみの場合などだ。
下手にこのアプローチをとるのであれば、コンサルタントとして叩き台はもっておくとして、そこから選択肢やフレーム・論点のみ抜き出して、①③④のアプローチを取るほうが参加者の理解・納得を得られる。
今回5つの型を紹介したが、それぞれ一長一短がある。
コンサルタントの知見や能力が問われるもの。
準備に時間がかかるもの、かからないもの。
顧客の議論の状況。
時間がないからといって①のアプローチをとると、結局議論が成立せずに「もう1回議論しよう」と逆に時間がかかる場合もある。
それぞれの要素を鑑みて、「今回どの型をとるべきか」を正しく見極めて、必要に応じ前もって準備したり、間に合わなければ議論を延期にすることも考えていこう。
「我々」という言葉が持つ力と心理的安全性
コンサルタントというのは、クライアントの力を借りないと、何もできない仕事だ。
コンサルタントから提案したり推奨案を提示しても、クライアントが納得しなければ無駄になる。
いろいろ戦略や業務案をつくっても、クライアントが実行に移してもらえなければ意味がない。
クライアントと言い合い・議論しあい、「この人が言う事なら」と理解をしてもらい、良好な関係・信頼関係を構築することがコンサルティングの大前提となる。
この関係を構築しプロジェクトをうまく進める際の重要なことの1つに言葉の使い方がある。
言葉の使いようによって、意識や行動が変わる。
例えばうちの会社だと、プロジェクトに関わるお客さんと自社のメンバーを切り分けて語ったりしない。
「御社のプロジェクトではこちらの選択肢の方を選ぶべきじゃないか」
「御社が目指す方向性はこういうことではないか」
とは言わない。
「我々としてはこちらの選択肢の方を選ぶべきじゃないか」
「我々が目指す方向性はこういうことではないか」
と言う。
お客さん・プロジェクトとコンサルタントをあえてわけず「我々」と一緒くたに呼称する。
はじめ、SEあがりの私には違和感があった。
「そんなことは言ってもお金もらっているしお客さん、なのでは」
「結局、コンサルタントは実行の責任持てないし、当事者にはなりないのでは」
と思っていた。
しかし、この些細なことを続けることがプロジェクトを進める上で心理的安全性をつくっていることを実感するようになった。
「この人はほんとうにうちのことを真摯に考えてくれているんだな」
そう思ってもらえることで、プロジェクトでの議論に一歩踏み込めるようになる。
「濱本さんが言っている案も一理あるんじゃないか」
「濱本さんはどういう風に考えている?」
「ちょっといいにくいけど、こんなデメリットがあるから本当にこの選択は正しいのか疑問がある」
みたいな意見がでてくるのだ。
これは「この人なら言ってもいいな」という心理的安全性があるからに他ならない。
「結局、コンサルタントは当事者にはなりえない」という思いは顧客には見透かされている。
そうでなく一緒にプロジェクトについて考えてくれている人に対しては意見を聞いてもらえるし、理解もしてもらえる。
さらにはマズい状況の相談や進め方の提案があがってくる。
言葉は態度にあらわれる。
これを知ってからプロジェクトでの言葉の使い方に細心の注意を払うようになった。
顧客社内の用語を積極的につかったり、「カタカナが多くてわかりづらい」と言われれば日本語訳に必死で変換した。
「顧客に入り込んだ言葉になっているだろうか」と打ち合わせ資料や報告資料を見返すようにした。
良好な関係・信頼関係を構築するのに言葉の使い方は第一歩でもあり、一番多く顧客に触れる機会でもある。