過去のコミュニケの失敗とRespect
若かりし、私がチームリーダーをやっと担えるようになったとき。他人のことがわかってないが故に起きた、苦い経験をお話しよう。
ある人事部と一緒のプロジェクトを行っていたとき、新卒、ピッカピカのメンバーがチームメンバーとして入ってきた。
「新卒」ということもあり、アサイン時点でパソコンや顧客とのやりとりなど、ある程度のレクチャーとフォローをし、仕事が進められるだけのインプットは教えておいた。
それ以降は、毎日のチェックポイントとして進捗確認と相談の時間は設けて、あとは本人に任せることとした。
「自分で咀嚼して理解して考える時間が必要だろう」
「コンサルタントとして入ったんだし、自分で考えてみたいだろう」
「定期的に相談の場は設けているし、追加で質問したいときは自分で見計うだろう」
と思っていた。
だが、あとに本人に聞いた話だと
「なぜこんなにかまってくれないのだろう」
「自分とコミュニケーションとるのを避けているのかな」
「自分の頭だけで考えるの辛いな…」
と思い悩み、なかなかに話しづらい・やりにくい雰囲気に感じていたようだ。
そのためなかなか仕事はうまく進まず、そしてチームリーダーの私からは進捗を細かくチェックされるようになり、さらに相談はしづらくなり、と悪循環に至ってしまった。
これが解消したのは、たまたまお客さん内で行われたワークショップに我々も参加したのがきっかけだった。
そのワークショップは、「相手の人となりを理解し合う」というもので、2人1組でお互いの考えや思考の違いを認識するものだった。
そこで、私と新卒メンバーが組むことで、
「え、そんな風に思ってたの?自由に考え動きたいと思って進捗だけ見るようにしてたのに」
「え、そんな考えだったの?単純に避けられてるか、仕事できないやつと見放されているかと思っていた。」
とお互いの思っていることがつまびらかになった。
こんな事態が起きたのは「こういう考えを持った人もいる」という個々の違いの理解・認識をお互いが不足していたことによる。
相互に「こういう考えを持った人もいる」と理解して、相手の思考に合わせた行動をとれていれば事態は違っただろう。
こんなケースは他にもある。
・気持ち・思いが先行する人
・じっくり考え、先の計画を見据えて動き出す人
こういうタイプがタッグを組んで、お互いの個々の認識ができていないと、うまくいかない。
前者の人は「なぜすぐ行動に動かさないのか、走りながら考えていけばいいじゃないか。行動が遅い」と思う。
後者の人は「あとさきなく進めて効率も悪いし、リスクしかない。気持ちだけで仕事はうまくいかない」と思う。
お互いがお互いに不満を持ち、ことはうまく進まないし、ストレスが溜まっていく。
「コミュニケーションを通して考え深めたい人」と「自分でまず考えコミュニケーションで答え合わせやブラッシュアップしたい人」。
「社内の人にはフランクに接するのが壁をなくすと思っている人」と「社内の人にもかっちり応対するのが失礼でないと思っている人」。
いろいろな思考の違いがある。
お互いの思考を認識・理解できていないと、お互いの行動に不満をもってしまう。
これを避けるための行動様式として、弊社ケンブリッジのカルチャーとしてRespect(リスペクト)がある。
直訳すると「尊敬」だが、年長者に対して、偉い人に対して、すごい人に対しての尊敬とは少し違う。
個人の考えや背景を尊重する、という意味合いだ。
個人、その人となりの思考、を理解・尊重すること。
先の私の例だと、自分が「こうだろう」と思うことに固執しないこと。
「コミュニケーションをとりながら思考や行動につなげていきたいと思う人もいる」ということを理解し、尊重すること。
これはコンサルティングワークの中でも役に立つ。
例えば、こんなことないだろうか。
営業業務の集約・効率化の選択肢がいつかあったとしよう。
見積書作成をアウトソースする、受注後の契約管理をアウトソースする、顧客からの問い合わせ含むインサイドセールス業務を集約させる、など。
メリデメを整理した上で顧客と打ち合わせに臨んだが、どうも顧客側の反応が悪い。
「これこれこういう理由で、この選択肢が一番でしょう」と話しても、「うーん、どうだろう」と煮え切らない。
こういう場合に、「全然煮え切らないな!こっちがこれだけベストな選択肢を出しているのに!」「まったく理解できん!」と怒っても事態は何も変わらない。
プロジェクトが前に進まなければ1個人がぷりぷり怒っても仕方がない。
そうでなく、こういうときにRespect(リスペクト)してみる。
邪推を抜きに、「なぜこの人はこんな態度をとるのだろう」と相手の思考に立ってみる。
「PMとして現場の痛みを伴う施策に迷いがあるのかもしれない」
「過去経理畑だったので、費用のことそ気にしているのかもしれない」
いろいろな想定が浮かぶだろう。
そして率直に、「こんなことを気にされてますか?」と相手に聞いてみる。
傾聴、といえばかっこいいいが、とにかく純粋に知らないものとして考えを聞いてみる。
単純に体調悪くて頭が働かなかったからという場合もあれば、「言われてみれば」と新たな視点に気づけることもある。
それを汲み取り、改めて議論に持ち込むことで、プロジェクトとしてよりベターな選択ができ、かつ相手の理解も協力も促される。
Respect(リスペクト)という言葉自体あまり日本人にはなじみがない。
だが欧米ではいろんな人種が集まるため、当然の言葉として使われている。
我々が仕事をする上では、他の国のような人種の多様性とはいかないが、思考の多様性は同じようにある。
会社でも、プロジェクトでも、面する人は同じ思考の人は誰ひとりとしていない。
そのときにこの「個人の思考を尊重する」というRespect(リスペクト)を心がけることでずっとものごとがスムーズに進むはずだ。