コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

「我々」という言葉が持つ力と心理的安全性

コンサルタントというのは、クライアントの力を借りないと、何もできない仕事だ。
コンサルタントから提案したり推奨案を提示しても、クライアントが納得しなければ無駄になる。
いろいろ戦略や業務案をつくっても、クライアントが実行に移してもらえなければ意味がない。
クライアントと言い合い・議論しあい、「この人が言う事なら」と理解をしてもらい、良好な関係・信頼関係を構築することがコンサルティングの大前提となる。

この関係を構築しプロジェクトをうまく進める際の重要なことの1つに言葉の使い方がある。
言葉の使いようによって、意識や行動が変わる。

例えばうちの会社だと、プロジェクトに関わるお客さんと自社のメンバーを切り分けて語ったりしない。
「御社のプロジェクトではこちらの選択肢の方を選ぶべきじゃないか」
「御社が目指す方向性はこういうことではないか」
とは言わない。
「我々としてはこちらの選択肢の方を選ぶべきじゃないか」
「我々が目指す方向性はこういうことではないか」
と言う。

お客さん・プロジェクトとコンサルタントをあえてわけず「我々」と一緒くたに呼称する。
はじめ、SEあがりの私には違和感があった。

「そんなことは言ってもお金もらっているしお客さん、なのでは」
「結局、コンサルタントは実行の責任持てないし、当事者にはなりないのでは」
と思っていた。

しかし、この些細なことを続けることがプロジェクトを進める上で心理的安全性をつくっていることを実感するようになった。
「この人はほんとうにうちのことを真摯に考えてくれているんだな」
そう思ってもらえることで、プロジェクトでの議論に一歩踏み込めるようになる。
「濱本さんが言っている案も一理あるんじゃないか」
「濱本さんはどういう風に考えている?」
「ちょっといいにくいけど、こんなデメリットがあるから本当にこの選択は正しいのか疑問がある」
みたいな意見がでてくるのだ。
これは「この人なら言ってもいいな」という心理的安全性があるからに他ならない。

「結局、コンサルタントは当事者にはなりえない」という思いは顧客には見透かされている。
そうでなく一緒にプロジェクトについて考えてくれている人に対しては意見を聞いてもらえるし、理解もしてもらえる。
さらにはマズい状況の相談や進め方の提案があがってくる。

言葉は態度にあらわれる。

これを知ってからプロジェクトでの言葉の使い方に細心の注意を払うようになった。
顧客社内の用語を積極的につかったり、「カタカナが多くてわかりづらい」と言われれば日本語訳に必死で変換した。
「顧客に入り込んだ言葉になっているだろうか」と打ち合わせ資料や報告資料を見返すようにした。

良好な関係・信頼関係を構築するのに言葉の使い方は第一歩でもあり、一番多く顧客に触れる機会でもある。