コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

「文字打ちを皆が見る場」を避ける2つのコツと7つのチェック項目

ファシリテーターの役割は議論を活発化し、意思決定などをスムーズにし、打ち合わせなどを効果的な場に導くことにある。

ただ、打ち合わせ中にこんな状況になることはないだろうか。
議論してある程度の結論を導いたあと。画面に映し出された資料に、パチパチをその結果を打ち込むのを参加者がじっと見ている。ファシリテーターや進行役は文字打ちに集中、なんともいえない沈黙がその場を占める。

この状況はファシリテーターとしてはできる限り避けなければならない。
なぜなら、場の効率性を損なうからだ。この沈黙の時間も複数の参加者の時間を奪っているのであり、時間の無駄になる。また、こういう時間が多発すると自然と内職に移る参加者がでてくる。

それよりも決定事項や未決事項を明らかにする、次の議論に移る、という動きをした方が効果的な場に導くことができる。
ファシリテーターは参加者の時間効率を最大化するのが仕事なので、その場で資料をきれいにするのに参加者の時間を使うのはもったいない。議論を生産的にすることに頭をフル回転させる。議論すべきことがないなら、さっさと次の議論に移るかその場を終わらせる方がよい。

 

とはいっても頭でわかっていてもついつい、この「文字打ちを皆が見る場」に陥ってしまう。

これを回避するのに2つのコツがある。
1つはファシリテーターと画面表示役・文字打ち役を分けることだ。
ファシリテーターは本来進行なり議論の活発化に集中しなければならない。だが、そういうスキルのない人ほど、言われたことを文字打ちすることに陥りがち。「この場をどうさばいたらいいかわからない…なら資料更新しておこうか」と思って資料にパチパチする方に手が動いてしまう。
これを避けるためにそもそもファシリテーターと資料役の役割を分ける。ファシリテーターは議論活発化に集中し、別の人が資料の投影や文字のパチパチを行う。この2つの役割を同時にこなす器用な人・スキルが高い人もいるが、本来議論をうながすことと経緯や決定事項を文字に落とすのは使う脳みそが違う。両方を器用にできないなら役割をわければいい。
われわれの会社では、ファシリテーターとスクライバー・ノートテイカー(議論を文字に落とす人)は役割をわけて打ち合わせに臨む。これも上記の背景があるからだ。
最近はクラウドなどITツールが発達いているため、別々の人が同時編集ができるので、ファシリテーターが画面を写しながら、別の人が書き込みする、ということもできる。ただ、この場合も鋼の意志がないとファシリテーターがPCに手を伸ばし文字を打つことに逃げてしまうので、そもそもファシリテーターがPCを触れないように事前に役割を分けておくほうがおすすめだ。

この1つ目のコツは「ファシリテーターを文字打ちさせない」という環境づくりだったが、それだけだとファシリテーターは固まって何も発言できない、という状況に陥りがち。それを回避するために「問をチェックリスト化する」というのがもう1つのコツだ。
その場で臨機応変に問を出すのは高いスキルを求められる。なので事前にチェックリストとして定型化しておく。主なチェック項目としてはこの7つだ。
①でてきた意見はどんな内容か、正しく自分・参加者が理解できているか

→理解できていないなら改めて説明いただくか、ファシリテーターが翻訳して参加者の理解をうながす
②参加者の質問と回答は正しくつながっているか、質問の回答になっているか

→回答になっていないのであれば質問を再度説明するか、「回答になっていないのでは」という問いを場に投げる
③複数人から出てきた意見は対立していないか、対立してるならどこで対立しているか

→対立していれば対立していることを明らかにし「どちらの意見がよいか」を場に問う、対立しているか自身がなければ「意見が対立してます?」と場に問う
④特定個人の意見が意思決定になっていないか、場の合意になっているか

→特定個人のみに発言が集中していれば「XXさんはどうですか」と振る、別の意見がすでに出ていれば「こういった意見でてましたが今の発言が意思決定でいいですか」と場に問う
⑤結論はクリアになっているか 

→クリアになっていれば「こういうことでいいですか」と確認する、クリアでないなら「結局結論はどういうことでしょう」と場に問う
⑥結論から次のアクションは明確か 

→自身でわかるなら「ではこれを受けてこうしましょう」を確認する、わからなければ「ではこの結論からこのあとどうしましょう」を場に問う
⑦この場の論点に回答しきれているか、今日の目的を達成できたか 

→回答しきれていれば次のアジェンダに・目的達成できていれば終了、自身で判断つかなければ「すべて議論し尽くしてますか、懸念やもやもやないですか」を場に問う

 

ファシリテーターはかっこいい意見を言ったり、みんながハッとする結論を自分が導き出すのが役割ではない。もちろんそれができるにこしたことはないが、まずは「自分が」ではなく、どう場を活性化することに集中する。そのために、場の状況や議論の内容を見て、①~⑦に該当しているものはないかをチェックする。そして必要に応じて、場に問を投げる。まずこれを徹底することがファシリテーターの価値になる。

ファシリテーターはやもするとただの進行役になったり、文字打ちのタイプライターになってしまう。それを回避するためにも挙げた2つのコツをもとに愚直に議論の活発化に貢献しよう。