コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

プロセス型コンサルの提供する価値とは、あるいは顧客と議論を深める関係

私が勤めている会社では「プロセス型コンサル」をうたっている。
通常のコンサルティングファームはグローバル含む圧倒的コンテンツで勝負する。
それに対してプロセス型コンサルは名前のとおり、コンテンツよりも考える・合意するプロセスに価値を置いている。
これによりプロジェクトの検討スピードや推進を後押しする。
 
どんな違いがあるか、例を持って説明しよう。
「新規事業を企画・立案する」というプロジェクトがあったとする。
その際に、「事業のアイディアを出す」時点で、コンテンツ型とプロセス型で支援の仕方は大きく異なる。
 
コンテンツ型で新規事業のアイディアを出す場合、以下のような支援をするだろう。
SDGsの各分類に対してステークホルダーの興味をアンケートし数値化
・外部レポートから社会課題抽出
・他社のベンチマークから業界で重要な課題を選定
・業界の特徴・ケイパビリティから事業機会を具体化
このやり方だと、ロジカルに事業の種は見つけられる。
だが、そこに企業であり、事業を推進する人の思いはない。
 
プロセス型が新規事業のアイディアを出す場合はがらりと異なる。
・まずは市場の課題であり、顧客の悩みを抽出する
・その上で企業として何を果たしたいのか、自社・顧客・社会に対してどんな価値を生み出したいのかコンセプトを決める
・それがなぜ今できていないのか、どうすれば自分たちの強み・リソースを活かし解決できるのか見出す
この2ステップ目が重要かつ難しい。
システム思考やイノベーションプロセスなど、この場合に最適であろう枠組みや観点を提示しつつ、顧客と一緒になって考える。
顧客の思考を促す・枠を超えさせるために、突飛な考えや問いを与える。
具体案・個別案に議論が行こうとした際には、そもそも論を投げ、議論を揺り戻す。
安易な思考に流れていないか、議論結果を注視する。
ここに「会社にも社会にもこれが必要なんだ」と思いが灯ることで圧倒的にプロジェクトの推進力が変わる。
その後のビジネスを具体化したり、実現手段の取捨選択をする際の拠り所になる。
「これをやろうとすると示唆を得るデータ元が必要ではないか」
「これは価値提供のために欠かせない」
などなど。
 
プロセス型で議論を進める際に特に重要なコンサルとしてのスタンスは、顧客vsコンサルという構図をつくらないことだ。
「こうあるべきだ」と先生型で臨む場合は、どうしても顧客はレビュワーとして「ここは考えているのか」「ここがダメだ」と指摘に走る。
プロセス型コンサルは顧客と協働で考えるため、顧客とはProblem vs Us(顧客・コンサル)という構図をつくる。
検討のための指摘や反論はWelcome、それをもとに議論を深めるが、コンサルがその責を負うのではない。
顧客とともにその課題を検討・解決していくのだ。
 
一般的なコンサル像とはかなりかけ離れていると思われるだろう。
だが今後企業が変化の早い・先の見えない市場を生き抜くには、すべきことから目をそらさず、思考を深め、思いを深めるための、パートナーとしてのコンサルが求められるだろうと信じている。