コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

コンサルの提案も発散から

コンサルティングサービスにおける提案活動は、通常のデリバリーと毛色が変わり、ベテランPMでもなかなかうまく進めることができない。
通常のデリバリーだと、成果としてまとめあげる・意思決定することが重要なため、ヴァージェンスモデルで言う収束に注力することが多いが(当然施策の抽出なり課題の洗い出しでは発散の要素もあるのだが)、提案活動では発散:収束=8:2、位になる。
どういうことか。
 
例えば、営業部門の生産性を上げたい、という顧客に対して提案活動をする場面をイメージしてほしい。
「営業がなかなか生産性があがらなくてねー残業も多くて」
というような顧客に対して
「であれば業務改革しましょう。プロセスは現状分析から課題整理がありまして~」

「それならSFAを導入しましょう。弊社ではこんな事例があり、生産性向上の効果が上がってますので。」
と言われても、顧客側は「うーん、本当にそれがいいのかわからない。パス。」となってしまうだろう。
 
コンサルに相談し、まだ提案活動の段階の場合、顧客の思考・課題感はまだもやがかかっている状態なので、いきなりショットガンで狙い撃ち、としてしまうと顧客に響く提案はできない。
その前に、顧客の困り事や本当に困っている課題を索敵し、ソリューションやサービスを散弾で試していき、一番困りごと・課題に効きそうなソリューションやサービスを見極めて、最終提案としてまとめあげていく、イメージだ。
この索敵・試し打ちが発散と収束の「発散」と言っていた部分となる。
 
ではその「発散」とは具体的にはどんな発散を行うのか。大きく3つに分類される。
 
①必要な情報を引き出し、整理する
今回なら「営業の生産性があがらない」というキーワードに対して、
 ・それはどういうことか
 ・どんな事象が起きているのか(例)
 ・このままだとどうなるのか
 ・なぜそう思うのか、なぜこうなったと思うか
といういろんな観点から質問をしていき、一番の課題を浮き彫りにしていく。
 「生産性が上がらないとはね、営業が現場に行けないということでして…」
 「実際に残業の割に、半分以上が事務作業にとられているんですよ」
 「このままだと、現場のニーズも掴めず、言われたものを手配するだけの部隊になってしまう」
 「とにもかくにも入れる情報の箱が分散していて、同じことをいろんなところでやっている」
というような情報が引き出せていければ、どんなソリューションが今回は必要かが浮き彫りになってくる。
顧客側も頭の整理を行ってもらうことで、自分の困りごとに気づき、どんなソリューションが適しているかが判別しやすくなる。
 
②事例や案をぶつけ、今回どれが最適そうか当てはめていく
・他の顧客でも起きている課題はないか
・他の顧客やプロジェクトで有効だった施策が当てはまらないか
・今後起きうるリスクや障害がどんなものがあるか、今回は当てはまるか
などを散弾でぶつけていき、今回どれが当てはまりそうか仮説を見極めていく。
 「営業の生産性ではFAXや電話のやり取りが未だに多く、時間がとられてることも多いけど、そういった課題はないか?」
 「営業といいつつ、顧客の問い合わせや出荷までの全体進捗管理もしてオーバーワークになることもあるが御社ではどうか?」
 「DMなどはシステムに任せ、営業は一番確度濃厚な顧客のみ訪問する策を打つこともあるが、今回有効だろうか?」
 「できる営業のベストプラクティスを標準化する策もあるが、できる営業がノウハウを開示しないこともあるが御社はどうか?」
など、ここは事例や案を数多くぶつけつつ、一番の課題や一番筋がよさそうなソリューションを見極めていく。
①で引き出した情報だけだとまだ狙い撃ちとはいかないので、ここは数で当てをつけていく方が効果的だ。
 
③考え方やフレームワークをぶつけ、進め方のイメージをふくらませる
 「例えばECRSのフレームで考えると業務で無駄な部分は見いだせそうか?」
 「組織、役割・ルール、業務、システムの観点で課題はどこに集中していそうか?」
などフレームワークでも思考プロセスでも当てはめ考えていく。
これは②で事例がだしつくせない補完でもあるし、実際にプロジェクトを開始し現場/コアメンバーと検討する際にどれがとっつきやすく検討しやすいか見極める試金石にもなる。
 
こういったもろもろの発散をしつくした上で、顧客が何が解決したい困りごとなのか、それに対してコンサルタントとしてどんなソリューションが提示できるのか、そしてお互いのやること・できることのイメージ合わせを収束していき、提案としてまとめていく。
この発散がどこまでできて、顧客の解決したい課題が見極められるかが提案の質を左右する。