初の上流でのつまづきと目的思考矯正の難しさ
日々、残業するほど忙しい。
だけど、せっかく時間をかけた作成物はプロジェクトや会議で使われない。
それを挽回しようとまた時間をかけるが、またその労力が成果として実らない。
そんな悪循環に陥ったことはないだろうか?
コンサルタントだと、構想策定や戦略策定など上流と呼ばれるプロジェクトに初めて参画した際にそういった事態によく陥る。
例えば。
顧客の視野を広げるために事例調査や市場調査を実施することになった。
いろんな情報を漁り時間をかけて調べたものの、PMから
「いや、こういう情報を知りたかったわけじゃないんだよね」
「これだとあんまり使えないね」
と言われ徒労に終わる。
「ピークの業務量を平準化しよう!」と始まったプロジェクトで、いろんな関係者からヒアリングしたものの
「会議の時間が長い」
「業務品質が低くて困っている」
「がんばっているのに評価されない」
などあまりに雑多な情報が集まってきて、ヒアリングした結果の扱いに困る、プロジェクトに必要な課題分析に活かせない、などなど。
私もJr.コンサルタント時代、討議用の資料を作成するも
「これじゃ全然お客さんと議論できないよ」
とつき返され、再度作成しまたつき返され、と延々深夜まで作業して心身ともに疲弊した。(それに付き合わされたPMもそうだろうが…)
これ、いま振り返ると圧倒的に足りてなかったな、と思うのは
「目的思考」
だ。
何のために必要か考えずに手を動かすとゴミをつくることになる。
そして時間があっという間になくなる。
調査なりヒアリングも、その先の目的を見据えていないと時間をかけても無駄におわる。
手を動かす前に
「これをやってどんな成果につなげるのか」
「これをやって何が得られたら嬉しいのか」
「これをやったあと、どんなアクションに繋がればいいのか」
をまず考えるのだ。
先の例で、事例調査や市場調査なら
「これをやってどんな成果につなげるのか」
→最新のIT活用事例から、顧客が今後すべきことを出す切り口にしたり、実行段階でどんなハードルやタスクが生じるかイメージを高めてもらう
「これをやったあと、どんなアクションに繋がればいいのか」
→施策検討の際に、事例から自社に必要な施策を考えられる
ヒアリングなら
「これをやって何が得られたら嬉しいのか」
→ ピークの業務はどんなものがあるのか・どの程度大変なのか、なぜ平準化できないのか、課題の実態と原因の勘所を得られる
「これをやったあと、どんなアクションに繋がればいいのか」
→課題分析の際に、実態をもとに現状の厳しさを認識してもらう、また分析時の仮説を立てられるようになる
といったような具合だ。
この「なんのために?」という軸があることで目的に沿った動きになり、まったく検討外れのことをしなくて済む。
調査でどんな内容を調べようか、ヒアリングでどんなことを聞こうか、と具体化する際の指針にもなる。
「目的思考を意識しよう!」というのは言うはやすし。
「時間をかけて仕事することが美徳」と、古き良き日本的価値観を暗黙的にすりこまれた自分にとっては、その発想を転換することが難しかった。
そのときPMから言い渡されたのは「打ち合わせ準備ギブス」なるものだった。
これは単純に、
「何のためにやるのかか」
「どんなアクションに繋げるのか」
が書かれた紙を渡され、それを書こう、というもの。
ただ、「ギブス」とある通り、PMに相談をする際には必ずこの紙を書いて渡してから相談すべし、という強制(いや矯正?)。
当初は忘れて書かずに相談に行って
「なんで書いてないの、書いてからまた来て」
と言われすごすご退散することもあったが、徐々に書くことに慣れていくと、紙自体がなくても相談時に目的を意識して話すようになる。
そこからさらにタスクを進める際には必ず紙にあった内容を考えてから手を動かすようになった。
わたしはこの機会を通して身につくことができたが、これくらい思考を矯正するのは難しい。
「目的思考」はさぁやろう、といって急に習慣づくものでもない。
もし目的思考を身につけようと思うなら、同じように他人を巻き込むのも1つの手だろう。
同じような紙なりシートを準備しておいて、まずその内容を認識合わせてもらうように「もし忘れていたら指摘ください」とPMなりリーダーと話しておく。
これにより、ちょっと初めの手間は増えるかもしれないが、目的の認識の相違もやることのズレも防ぐことができ、両者WinWinになる。
こうやって他人からもやるように促してもらって、ゆくゆくは紙なりシートなりなくても目的思考が身につけば、さらに一石三鳥にもなるはずだ。
この目的思考は一生もののスキルになる。
プロジェクトの進め方を考える際、課題解決策を考える際、細々タスクを考える際などあらゆる場面で活用する。
だからこそ、初の上流なりでつまづき、その重要性に気づいたら、その時は大変だが目的思考を身につけられるよう踏ん張り、他人を巻き込み、成長してほしい。