コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

オピニオンを考える難しさと4つの軸

こんな経験ないだろうか。
コンサルタント、PMOとして動いているが、やっていることは情報共有にとどまり、皆と同じ議論の土俵に立てていない。
自分のオピニオン(仮説・意見)がないためそれ以上踏み込めない。

ここで言っている情報共有とオピニオンをもう少し具体的に説明しよう。
例えば各所でバラバラになっている業務のセンタ化。
現状ヒアリングしているので「これがどうなっている」は言える。これが情報共有。
ここで
「センタ化もいいがその中で無駄は廃止し、セルフ化した上でセンタ化すべき」
「今回は事業部の声が強い情勢もあるので廃止・セルフ化に特に注意すべき」
「廃止すべき業務としては、個社独自×売上・カルチャー的に価値を見出しにくいもので考えるべき」
というのがオピニオンだ。
このような「仮説」を顧客に主張し、顧客の意見とぶつけ、議論を深めていく。

このオピニオン自体考え出すのも難しいが、オピニオンを考えたとしても
・一般的なことは言えるが、それがこの顧客にベストか自信がない/言い切れない
・「こうすべき」というのを言えたが、顧客の現状や目的とズレてて刺さらない
・「こうすべき」というのを言えるが、理想論過ぎて現実的でなく疑問を抱かれる
ということもある。

自分が経験した領域であればいいが、いろんなプロジェクトを担うとその都度、そこで必要なオピニオンも変わってくる。
・生産計画/トレーサビリティのあるべきとは
・品質管理はどこまで踏み込まないいけないか、場当たり対応との線引は
・Webサイトとして、コンテンツのつながりや顧客導線はどうあるべきか
などなど。

全領域経験して知見をもっているなど土台無理だ。

ではどうすれば毎回異なる課題・顧客の要求に自分のオピニオンを考えられるか。

たった1つの正解はないが、自分が意識しているポイントはこの4つだ。
①客観的情報・過去の経験や事例から
②目的に照らし合わせ
③それに対して合理的に考えるステップを出し
④あるべきだけでなく現状・ファクトから現実的に
自分ならどうするかを考える

自分が「オピニオンが弱い」と言われた際に、上記のどれかが不足していることが多かった。
そこから導いたポイントだ。

例えばとある農業法人を拡大・成長させるための支援をしているとき。
②のような「事業規模をこれくらいにしたい」「こんなファームになりたい」というのはわかっていた。
だが「農業」というあまりにこれまでと経験が異なる領域になかなか議論で土俵に立てない。
③の検討ステップも考えるも、企業と検討すべき要素が異なるためどうもピントが合わない。
農業の場合は土地・品種・地域との関係などキーになることが異なる。
土地によっては冷害もあるし、品種によっても連作ができない。規模を大きくするのに1品種ですべきか、連作できる・リスク分散のために複数品種作るか、なども考えなければならない。
初めは顧客が議論をリードする形になり、言っていることについていくのにも必死。
これを挽回するために行ったのが①の圧倒的な不足解消だ。
いろんな書籍や政府・JAで公開されている成功例を読み込み、関係ある農業従事者に話を聞いたりしていった。
そこから企業との違いや成功パターンを見出し、③検討のステップを調整していくことでなんとか顧客と対等に議論し、法人の立ち上げ・成長に貢献できた。

他だと、スクラッチだった基幹システム刷新にあたりパッケージの設計・設定を支援していたときの話。
その業務・パッケージには馴染みがあり、ノウハウも持っていた。
顧客の現状もヒアリングしているがめ、業務がどう複雑かだけでなく、現場がどう大変かもわかっている。
その中で、パッケージでできない要求、例えば入力支援・チェック機能や複数人での監査機能など、が溢れ、「さぁどうする?」という事態に陥っていた。
単純に要求を飲み込めばカスタマイズが多発し、コスト・継続性でのパッケージの良さを活かせない。
だが要求をバシバシ突っぱねれば現場・業務が回らないのも確か。
ここでオピニオンがないと、「どうしましょうね」と現場担当者と一緒に悩み、ベンダーからの「それはできません」に一緒に涙して追加費用の申請をやるしかない。
ここで当初自分が不足していたのは②の目的だ。
短期的・現状立脚から見れば、現状担保することに目が行きがち。
だが、このプロジェクトの本来の目的は「コストと納期厳守」「費用に見合った開発」「パッケージの保守対応徹底活用」。
それを念頭に入れると
「本当にここまでの入力サポートが必要なのか?あとでチェックもするのに?」
「帳票でチェックする手段もあるのに、コストかけてチェック機能開発する価値はあるのか?」
というオピニオンが生まれる。
当然現場担当者とは意見がぶつかる。
だがこれで果たしたいのは「現状の維持」「現場の不満防止」ではない。
我々のような外部から来た人間がまっとうな議論をぶつけなければ本来の目的は達成できない。
このプロジェクトではいろいろ議論をした上で、本当に必要な機能に絞り、そして顧客・プロジェクトにベターな対策を導くことができた。

経験から、自分なりのオピニオンを考えられない、ピントがずれている際はこの4つのどれかが不足している。
普遍的な正解ではないが、軸があることで考えやすくなる。どこがイケてないのか検証する指標にはなる。

即オピニオンを作り出すには下準備も重要だ。
①~④の軸は「どこが不足しているか」を考えるためだけでも役立つが、その下準備の観点にもなる。
例えば①について言えばいろいろな領域にアンテナを張っておく。
勉強会やセミナーなどで経験や事例を補うのだ。
②③などはクリティカル・シンキングケーススタディで身につける。
一気に飛躍はできないのでコツコツスキルを身に着けていくしかない。
また、他のプロジェクトの話を聞いたり、提案内容を見た際に、「自分ならどうするか」を考え、当事者に「なぜそうしなかったか」をぶつけ検証・ブラッシュアップする。

地道ではあるがなにもないまま「オピニオン考えたい!」よりはスムーズなはず。

ここまで述べたこともあくまで私のオピニオンである。
他にいい軸や観点があれば取り込みたいし、ブラッシュアップしたい。
だが、まず仮説でいいので、このようなオピニオンを持つことが出発点だ。