コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

デリバリ後の「しまった」を防ぐ、開始前のベストケース・ワーストケース出し

プロジェクトをデリバリしている中で、「先に意識できておけばこんな事態にはなかったのに」とあとになって思うことはないだろうか?
ちょっとしたステークホルダーへのケア不足で話がこじれて、本筋でない調整に時間を費やされたり。
デキるんだけど他の人の意見を聞かない人を野放しにしてしまい、暴走とそのリカバリに陥ったり。
本来提案時で求められていた期待値があったのに、つい顧客と細かな議論にはまってしまったり。
プロジェクトの継続の種があったのに、忙しすぎてそれをステークホルダーと話し逃してしまったり。

先に、「この人要注意」「顧客メンバーはこんな傾向あるから」「こういう機会がありそうだから要チェック」など、プロジェクト内で意識合わせて、アンテナ高く貼っておくと防げた事態。
だけど終わってからそう思ってもあとの祭り。「しまった!」と気づいても、どうすることもできない。

私はこういう経験が多いので、最近では1つ工夫をするようにしている。
それは「プロジェクト開始時点のベストケース・ワーストケース出し」だ。


私達の会社がプロジェクトを開始する際には、内部でノーミングやキックオフと言って、事前にプロジェクトの内容や役割分担、抱負・期待値をあわせる場を設けている。
この話自体も、各々の動き方やPMが考えていること・デリバリに際してのメンバーへの期待がわかりとても有益だ。

私はそれに加えて、少し時間をとって、「このプロジェクトでのベストケース、ワーストケースは何だろう?」を議論している。
先日はじまったプロジェクトではこんな内容が挙がった。

(ベストケース)
・プロジェクトの継続自体は予算的にないけど、別部署で同じようなニーズはある。そこに話をつなげてもらえるかも。実際にこんな話が…
・社内での浸透ができればプロジェクトが加速する。だが、我々の提案期間ではその支援は入っていない。事前に顧客PMと社内浸透どうするかの話をしたり、この期間でヒアリングする人には発信力がある人を集めて後ろ盾作るなどはデリバリ外でした方がいいかも

(ワーストケース)
・顧客コアメンバーは知見があり細かい話しはどんどんでる。なのでそこで勝負しても不満足に終わるリスクがある。逆に大局観で検討漏れを指摘したり、大括りで誰でもわかりやすいまとめに意識した方がよさそう。
・アウトプットに満足されず、1ヶ月無償でアウトプット修正してよ、と言われるリスクがあるかも。この辺はこまめなレビューであり、期待値合わせが重要になりそう。
・先方に任せるタスクがあるが、個人で自分の世界観で進める人が担当することになりそう。事前にどうまとめてほしか伝え、顧客側PMの場に定期的にモノを出すように仕掛けた方がいいだろう。

こういった情報が実際のデリバリ前にあることで
「デリバリで我々の支援のあり方、価値の出し方」
「キーマンとその接し方」
「リスクとその対策」
などが強くイメージでき、それに関する情報にアンテナが張り、リスクが発生しても芽のうちに摘むことができる。


では、なぜ開始時点で「プロジェクトのベストケース、ワーストケース」を出す方がいいのか。
プロジェクトの途中や、随時PMからメンバーに小出しにするのではダメなのか。

まず1つに、パートナーやPM、メンバーでそれぞれ目線や持っている情報が違うことがある。
提案討議に関わっていたパートナーは、それまで接した顧客情報やそこから引き出した経緯・雰囲気を把握している。
PMなら過去の成功・失敗体験から、今回での注意点やリスクを見通している。
この両者から、メンバーがプロジェクトデリバリに関する注意点やコツ・肝を得られると、実際のデリバリで意識することができる。

もう1つはメンバー自身も、プロジェクトがさぁはじまるぞ、というまっさらな状態でインプットをもらうことで、プロジェクトのはじめに、注視すべき点やリスクを頭にいれることで、デリバリへの仮説が頭にある状態になる。
それにより、プロジェクト内容・自分の役割と紐付けて「どうデリバリしていくか」を考えやすい。
デリバリ途中でそんな話が挙がっても、「そうは言っても忙しいし…」「まずは目の前のタスクをこなさないと」となかなか意識の中に入っていかないものだ。


プロジェクト開始前は準備で忙しく、なかなか時間が取れないかもしれない。
だが、この内容なら、あえて全員集まった場でなくともSlackやTeamsなどのコミュニケーション手段でもいいだろう。
各々が意見を出し合い、パートナーやPMも含めて対策を事前に協議しておく。
メンバー自身も自分の頭を使ってどうすべきかまで考えてみることで、関連情報へ意識が向かい、リスクへのアンテナも張れるようになる。

リモートワークが主流になって随分このあたりも時間を気にせず、自由にできるようになった。
パートナー、PMがあえて場をもたなくても、メンバーから「こう考えてみた」とSlackに投げてコミュニケーションすることも敷居が低くなっている。
ちょっとした工夫だが、随分デリバリもしやすくなるので、まずは気軽に試してみてはどうだろうか。