コンサルタントの日々学び

日々のデリバリーで得た体験、ノウハウ、教訓とかを週次ベースで書き留めていきます。

「タグ付け」「同意」「言い換え」で議論はグッとスムーズになる

「本日は10年後のビジネスを考えてみましょう」
「将来として自社のビジネスチャンスがどこにあるか考えましょう」

このようにはじめに「今日何を議論したいのか」を明確に伝えたにも関わらず、実際の議論ではこうなることはないだろうか。

「今のお客さんはお金が動くことにした興味ない傾向があるからねー」
「今は環境嗜好の製品ってなかなか売りにつながらないんだよねー」

こちらが伝えた主旨と異なる発言が中心でなかなか議論が前に進まない。

本来であれば
「将来は人口減になりお金の流れも減少するのでそれをどうテコ入れするかに着目が当たりそう」
「今の異常気象などが続けはゆくゆくは環境嗜好にもニーズが高まるのでないか」
というような議論ができればベストだ。
議論が進み、ポジティブに意見を積み重ねることができる。

ただ、前者のような発言になるのにも理由がある。
1つは「言われたこともすぐに忘れてしまう」ため。
打ち合わせの冒頭で今日の目的を説明したとしても、そのときは覚えていても、実際の議論になると覚えてない。
議論までの間に他の情報を与えていたり、そのときには別のことに気を取られ聞いてなかった、ということもあるだろう。
そうなるとつい自分が思ったこと、興味・関心に沿った発言になる。
もう1つは「思考は現状に引きづられがち」な傾向があるからだ。
人はなかなかいまないことをイメージしたり考えたりすることが苦手だ。
つい自分が見聞きしたもの、経験したものをベースに思考する。
冒頭挙げたような将来について議論する際にはこの傾向が顕著にでる。


ではこのような議論をどうリードするといいか。
「タグ付け」「同意」「言い換え」の3つを活用することでうまくいく。


1つ目の「タグ付け」。これは「枕詞をつける」と言い換えてもいい。
議論になって、参加者に質問を振る際に、必ず今日の主旨であるキーワードを入れるのだ。

「XXさん、どうですか?」
「何か意見がある人いますか?」
「どんな考えが浮かびます?」

これではうまくいかない。

「XXさん、10年後のビジネスってどうイメージされてます?」
「自社のビジネスチャンスについて何か意見がある人います?」
「10年後のビジネスでどんな機会が考えられます?」

このように必ず、こちらが意図するキーワードをつける。

「そんな簡単なことでうまくいくのか?」と疑問に思う方もいるだろう。
だが、はじめにこのタグ付けをするだけで、質問された人は何を回答すればいいのかがわかる。
「質問されたことに回答しよう」という思考になるので、冒頭の目的を聞いてなかったり、つい現状の思考になってしまっても、主旨に沿った回答をしてくれる。
まずはクドくても質問・発言の際にはこのタグ付を忘れてはならない。


もう1つは「同意」だ。
議論する際に、我が強い人は別だが、人によっては自分の回答が意図に沿っているか不安に感じている人もいる。

「こういう回答でいいのかな」
「内容とか、粒度とか、このくらいでいいのかな」

こう感じている人に対し、挙げてもらった意見について「同意」を示す。

「なるほど、私は気付かなかったけど10年後はそうなってそうですね、いいですね!」
「たしかにおっしゃるとおりのビジネスチャンスって生まれそうですよね。」

ベタベタで構わない。むしろ最近のリモート環境だとベタベタで同意を示すほうが伝わりやすい。
みんな不安をもっているので、主旨に合っている・合ってないを「同意」として捕捉してあげる。
そうすることで、その後の発言も同じ感覚で回答を得やすくなるのだ。


最後が「言い換え」だ。
先に挙げた2つをやっていても、やっぱり主旨と外れた発言をされることは往々にしてある。
その場合は、発言を拾いつつ、こちらの主旨に合ったような意見に「矯正」して「言い換え」るのだ。

「今のお客さんはお金が動くことにした興味ない傾向があるからねー」

「なるほど。だとしたら10年後は人口減になってますけど、お金の動きも変わってるんですかねー」

「今は環境嗜好の製品ってなかなか売りにつながらないんだよねー」

「たしかに。だんだん関心が高まってますが、10年後だとどうなっているでしょうね。関心高まりますかね。」

「別のお客さんだと、異業種との情報連携も進んでいてねー」

「ということは、我々のお客さんも10年後にはそういった変化が生じてきますかね?」

「どんどん客先の売上も減っていってて10年後にはリスクしかないよ」

「でも、ということは売上減少を打開する策なり支援のようなサポートは求められるということですかね?」

といった具合だ。
相手の発言は汲み取りつつ(決して否定はしない!)、こちらの主旨に関する話題に誘導する。
議論をスムーズに進める人はこの展開がうまい。
議論が主旨に沿わない方向に行っても、相手の発言をうまくこちらの主旨に言い換える。


議論の目的/主旨があっても、人は自分の思っていること・興味関心で発言してしまうものだ。
だが、「タグ付け」「同意」「言い換え」というたった一言言葉を添えるだけで、議論を随分スムーズに進めることもできる。
ものすごいパワーや技術がいることではない。一言挟むだけだ。

だったら、ぜひともやってみよう。
ムダな議論をなくし、スムーズに打ち合わせを進めることは、自分だけでなく周りの人のためにもなるはずだ。